大塚桂惟子の人生いろいろ(第3話)

芸者生活

お客さまは省庁や企業のトップ、作家さんや落語家さんなどそうそうたる顔ぶれでしたが、私は普段の通りに接客していました。厳しい先輩からは「あんな態度ではあかんよ」と叱られましたが、女将さんはお客さんが愉しめるのが一番という考えで、「あんたくらいでちょうどええねん」とかばってくれました。最後は匍匐前進になるくらい酔っ払うこともあり、芸者としては異色だったと思います。いつも高級な高膳のお座敷をされる社長に、酔っ払うと「もう二度とおまえは呼ばない」おっしゃる方がいました。でも次も必ず指名されるんです。

芸者になってからは、太鼓とお茶、お花と踊りを仕込まれました。基本的に休みはなく、8時から13時ごろまではお稽古、15時から着替えて、17時から仕事……と、ほとんど寝る時間もありませんでしたが、なりたかった芸者になれたのですから、大変だとも思っていませんでした。

お客さまとざっくばらんに接するからかお客さま受けが良く、一番良いお席に入れてもらえるので、先輩芸者からは妬まれました。ほんのちょっとしたことでも、そして私は何も悪くなくても叱られましたね。でも、技術も何もかも先輩の方が上ですし、「怒られとったらええわ」と思ったので、何があっても「すみませんでした」と謝っておきました。

「矛盾が多い世界だな」と思いましたし、帰りにお酒を飲んでストレス発散する日もありましたが、あまり気にせず、日々を楽しんでいたような気がします。

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